- すでに年金を受給中なのですが、年金分割することはできますか?
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年金分割については、合意分割・3号分割の2種類があります。いずれも、すでに年金を受給中であっても年金分割が可能です。ただし、分割請求の期限は、原則として離婚をした日の翌日から2年となっていますので、注意が必要です。
合意分割は平成19年4月1日以降に離婚する場合が対象で、按分割合(分割対象となる婚姻期間中における当事者双方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)合計額のうち、分割を受けることによって増額される側の、分割後の持ち分割合)を取り決める必要があります。
一方、3号分割とは平成20年4月1日以降の婚姻期間を対象として、同年5月1日以降に離婚した場合に、国民年金の第3号被保険者(国民年金の加入者のうち、厚生年金保険に加入している会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者)が使う制度です。平成20年4月1日以前の婚姻期間に納めた年金は、合意分割の対象となります。3号分割は、当事者の一方から分割の請求があれば、当然に2分の1の按分割合で分割されます。年金額が改定されるのは、請求のあった日の翌月からです。
すでに年金を受給中の方であれば、数十年も先に年金を受給する若年離婚の場合よりも年金分割の利益をすぐに受け取れますし、長期の婚姻期間に応じた厚生年金記録の分割となるので利益も大きい場合が多いでしょう。
- 年金分割した場合の年金見込額をあらかじめ知ることはできますか?
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年齢が50歳以上の方や障害年金の受給権者であれば知る方法があります。
配偶者の年金の加入状況等について、年金事務所等を通して厚生労働大臣から情報の提供を受ける手続(年金分割のための情報提供請求)があります。50歳以上の方や障害年金の受給権者は、この手続の際に希望することで、(1)年金分割を行わない場合、(2)分割の割合(按分割合)を上限の50%とした場合、(3)分割の割合(按分割合)を本人の希望する割合とした場合の、3つのケースにおける年金見込額の通知を受け取ることができます。
- 離婚の際、慰謝料や財産分与などお金についてはお互いに何も請求しないと取り決めましたが、離婚後、元配偶者が婚姻期間中に不倫(浮気)していたと発覚しました。この場合、慰謝料は請求できますか?
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離婚の際に調停調書や公正証書などの書面を作成した場合、「本件離婚に関し、お互いに債権債務がないことを確認する」、「名目を問わず何ら財産上の請求をしないことを約束する」といった文言が記されることがほとんどです。
これを「清算条項」といい、清算条項を取り決めた以上は、損害賠償や財産分与の権利・義務などを放棄もしくは免除したと考えられます。したがって、元配偶者に慰謝料を請求することは困難です。一方で、厳密に取決めをしていない場合、不貞行為を知らなかったのであれば、錯誤(=勘違い)を主張し、取決めを取り消して慰謝料を請求できる可能性があります。ただし、不貞行為を知らなかったことから、不貞行為と離婚との間に因果関係がなかったとして、慰謝料が認められない場合もあります。
注意すべきなのは、あくまで夫婦間の取決めである以上、不貞相手に対する請求権までは放棄していないという点です。
そのため、仮に元夫に慰謝料を請求できない場合でも、不貞が原因で婚姻関係が破綻したといえる場合には、不貞相手に対しては慰謝料を請求できます。請求権が時効で消えてしまわないうちに請求をすることが必要です。
- 夫婦で離婚を話し合っているのですが、夫が「愛犬は絶対に渡さない」と言っています。離婚した場合、ペットの所有権はどうなりますか?また、ペットを引き取った場合、養育費はもらえますか?
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犬などのペットは、法律上は物として扱われます。そのため、離婚に際しては、家や車などと同じく、財産的価値があれば「財産」として財産分与の対象となり得ますが、財産的な価値はつかないことが多いと思われます。どちらにしても、離婚する際に夫婦で協議して離婚後にどちらがペットを所有し飼育するかを決めることとなります。
仮に財産分与の対象になったとしても、生き物であるペットを半分に分けることはできませんので、引取りを希望する側がほかの財産を譲ったり、あるいは相応額の金銭を支払うことによって所有権を得る形が一般的です。また、子どもと違い、ペットに対する養育費の支払義務はありません。原則として、ペットの飼育にかかる費用は引き取った側が負担することとなります。ただし、離婚する際の条件として、費用の一部負担をお願いしたり、その分を慰謝料に上乗せするといった形で支払を受けることは可能です。
なお、財産分与は「婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産」を分ける制度ですので、結婚する前から飼っていたペットは原則としてその対象になりません。その場合は、結婚前に飼っていた側に所有権があります。
- 財産分与のほかに慰謝料を請求することはできますか?
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できます。
ただし、慰謝料は、配偶者に不法行為(故意または過失によって他人の権利等を侵害し、これによって他人に損害を生じさせる行為)があり、それによって婚姻関係が破綻したという原因と結果の関係が認められた場合に限り請求することができるものです。そのため、離婚する場合に必ず慰謝料を請求できるわけではありません。また、すでに財産分与を受けており、その財産分与に十分な慰謝料が含まれていると判断される場合には、慰謝料は請求できません。
- 財産分与や養育費の支払いについて合意ができましたが、将来、その支払いがされなくなることを心配しています。何か対策はありますか?
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当事者の取決めを強制執行認諾約款付公正証書にしておくとよいでしょう。このような公正証書を作成しておくことで、相手方の財産に対し、強制執行をすることができます。
相手が公正証書の作成に応じない場合には、合意書を作成しておくことをおすすめします。これらは、調停、審判、裁判となった際に財産分与や養育費について合意があったことの証拠となります。
- 結婚後に購入した不動産が夫の単独名義になっているのをいいことに、夫が勝手に売却しようとしています。現在、離婚を考えており、この不動産も財産分与の対象になると思うのですが、なんとか売却を止める手段はありませんか?
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裁判所に対して、民事保全法に基づいて「処分禁止の仮処分」を申し立てる方法があります。
ただし、民事保全手続では、万が一、相手方(夫)に不当な損害を与えたときに備え、保証金を納めなければならず、裁判所が保証金の額を決定します。
- 不動産の財産分与をする場合、住宅ローンが残っているときにはどうすればよいですか?
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ローン付きの住宅を財産分与により清算する方法は、住宅を売却してその代金でローン債務を返済し、残りを分配する方法のほか、さまざまな方法が考えられ、どの方法が適切かは具体的な状況により変わってきます。このような場合には複雑な判断が必要ですので、不利にならないためにも、弁護士に相談することがおすすめです。
- 夫はまだ退職していませんが、今離婚しても退職金が財産分与の対象になりますか?
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任意に夫が応じる場合には問題ありませんが、裁判手続において分与の対象となるかはケースバイケースです。
というのも、将来の退職金(の額)は、退職に至るまでの見込年数が長いほど、不確定な要素によって左右されることになるからです。
この点に関して、これまでの裁判例によると、退職するまでの期間や勤務先の退職金規程などの事情から、退職金が将来支給されることがほぼ確実である場合には、財産分与の対象として認められる傾向があるといわれてきました。もっとも、最近は支給が相当先であっても、退職金が賃金の後払い的性質を有することから、財産分与の対象となると判断されることも多くなっているようです。
ただし、実際にどのように分けるかは過去の裁判例でもさまざまです。離婚時点で分けることを命じたものもあれば、将来支給されたときに分けることを命じたものなどもあります。
- すでに支払われた夫の退職金も財産分与の対象になりますか?
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財産分与の対象になる可能性があります。
退職金は給与の後払いに近い性質のものであるという考え方が現在の主流です。そうであれば、夫の給与から貯めた貯金が夫婦の共有財産として財産分与の対象になるのと同様に、退職金も財産分与の対象になると考えることができます。
ただし、財産分与の対象となる範囲は、退職金のうち、実質的な婚姻期間中に形成されたといえる部分に限られます。したがって、婚姻関係が悪化してすでに数年間別居しているといった場合には、原則として別居期間中に形成された部分の退職金は財産分与の対象にはならないことに注意が必要です。
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